トラウマカウンセラーの公認心理師のアカミネです。人々の内面に寄り添い、心の健康と幸福をサポートすることを大切にしています。今日はテーマとして「不安の正体」について。不安を感じない人はいるのでしょうか。それでは心理学の視点から探っていきましょう。
実体のない不安
人生にはさまざまな出来事や状況が訪れます。楽しいこともあれば、難しいことや不確かなこともあります。その中で私たちが感じる「不安」は、実体のない漠然としたものであることがあります。しかし、漠然とした不安のその背後には深い意味や理由が潜んでいることが多いのです。
不安とは、未知なものや未来の変化に対する心の反応です。私たちの脳は安定や予測可能性を求める生き物であり、起きてもいないことを恐れることがあります。これは進化の過程で生じた本能的な反応で、危険から身を守るための仕組みでもあります。しかし、現代社会ではその本能が過剰に働くことで、実体のない不安が生まれることがあります。
漠然とした不安
漠然とした不安は、具体的な出来事や原因が不明瞭であるために、解決策を見つけにくくなります。
これは心理学的に「漠然性の不安」と呼ばれるもので、具体的な対処方法が見つからないことが原因でストレスや不安が高まる現象です。この不安の特徴は、実際の不安よりも大きく見積もる傾向があることです。この漠然性の不安を扱うためには、自分自身の思考や感情に向き合い、不安の正体を探求することが大切です。
不安の正体を探る際には、自分自身に問いかけてみることが有効です。具体的には、自分が何を恐れているのか、どのような出来事や状況が不安を引き起こしているのかを振り返ってみましょう。また、過去の経験や信念、価値観が現在の不安に影響を与えている可能性も考えてみると良いでしょう。どんな時に不安を感じるのか、引き金はなにか、時間帯や、その時の状況はどうだったかをメモしておくと振り返る際に役立ちます。
さらに、不安を手放すためには受容のプロセスが重要です。不安を感じること自体は自然なことであり、否定する必要はありません。不安を受け入れることで、その感情が和らぎ、自分自身と向き合う余裕が生まれます。また、深い呼吸や瞑想、リラックス法などを取り入れることで、不安をコントロールするスキルを身につけることができます。
公認心理師が勧める不安への対処法
心理学的なアプローチでも、不安を理解し解消する方法が提案されています。認知行動療法やマインドフルネスなどは、不安に対する効果的なアプローチとして広く知られています。これらの方法は、自己意識を高め、漠然とした不安に対する気づきをもたらし、その正体を探求する手助けをしてくれます。手に負えない不安ではなく、対処する余地のある不安へと変化していくのが分かるでしょう。
不安の正体を理解し、手放すためのステップを踏むことは、心の健康を維持するために重要です。不安を放置すると、身体的な症状や精神的なストレスが増大する可能性があります。自分自身と向き合い、不安の根源を探求することで、ポジティブな変化をもたらすことができるでしょう。
不安は人間関係や仕事、健康など、様々な領域で現れることがあります。その正体を探求し、適切な対処法を見つけることで、より健康で充実した人生を築くことができるのです。一人で難しければ、誰か信頼のできる人に話してみてください。専門家に相談することでも整理が進みます。また、一度適切な解決法を身につけることが出来れば、それはあなたにとって頼もしい経験となります。
今後同じような問題が起きた際に、これまで以上に不安をコントロールすることが出来るはずです。心の声に耳を傾けることで、実体のない漠然とした不安を手放し、前向きな未来を歩む一歩を踏み出してみませんか?
禅宗の祖である達磨大師に、慧可という弟子がいました。慧可は、「私には心に不安があって夜も眠れません。どうかこの不安を取り除いてください」と達磨大師に訴えました。すると達磨大師は言ったそうです。「その不安を目の前に差し出してみなさい。それができたら、必ず取り除いてあげよう」と。そのとき慧可は、心の中にある不安とは実態のないものだ、ということに気づきます。起きてもいないことを恐れ、それに執着することが、いかに空虚なことであるかを学ぶのです。
「ざわめく心の静め方」著:枡野 俊明
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