心が「ぐるぐる」して止まらない時に|心理カウンセラーが教えるマインドフルネス

― マインドフルネスで「執着」をほどく練習 ―

ふとした瞬間に不安が押し寄せてきたり、頭の中で同じ考えが何度も繰り返されたりして、疲れ切ってしまうことはありませんか。

「失敗したらどうしよう」
「あの時、ああ言えばよかった」

こうした悩みは、パニック症や社交不安症、強迫症(OCD)、あるいはうつ状態など、さまざまな心の不調に伴って現れることがあります。

診断名は異なっていても、多くの人に共通しているのは、「その考えや不安から離れられない苦しさ」ではないでしょうか。

今日は、そんな心のこわばりを少しずつほどいていくための視点として、「マインドフルネス」というアプローチについて、公認心理師の立場からお話ししたいと思います。

💭なぜ「こだわり」が苦しさを生むのか

私たちは不安や怖さを感じると、知らず知らずのうちに、心を守るための“自分なりのルール”を作ることがあります。

たとえば、こんなことはないでしょうか。

・「LINEの返信が遅い。何か気に障ることを言ってしまったのかもしれない」
・「失敗したくないから、何度も見直してからでないと送信できない」
・「人にどう思われるか気になって、本音を言わずに合わせてしまう」
・「嫌な気持ちになりたくないから、苦手な場所や人をできるだけ避ける」

こうした反応は、一見すると自分を守るための自然な行動です。
実際に、その場では少し安心できることもあります。

けれども、その安心感に頼りすぎると、少しずつ心が不自由になっていくことがあります。

「ちゃんと返さないと嫌われるかもしれない」
「完璧でなければ出してはいけない」
「確認しないと大変なことになるかもしれない」
「相手に合わせないと関係が壊れてしまう」

このように、
“こうしなければならない”
“こうあるべきだ”

という思いが強くなると、気持ちや行動の柔軟さが失われていきます。

心理学的に見ると、これは不安に意識が強く引っ張られ、注意の切り替えがしにくくなっている状態とも言えます。

本来であれば、「気になるけれど、いったん置いておこう」と切り替えられるはずのことが、頭の中に居座り続けてしまうのです。

すると、自分で作ったルールに従わないと落ち着かなくなり、そのルールを守れないと、さらに不安が強まります。

たとえば少し返信が遅れただけで「嫌われたかもしれない」と考え続けてしまったりします。

こうして、不安を減らすためにしていた行動が、かえって不安を強めてしまうという悪循環が生まれてしまうのです。

👋マインドフルネスは「手放す練習」

ここで役立つのが マインドフルネス という考え方です。

マインドフルネスとは、単に瞑想によって「無心になること」ではありません。

「今、この瞬間の体験」に気づき、
良い・悪いという判断を加えずに観察する姿勢
のことを指します。

例えば、不安が湧いてきたとき、私たちはついこう思います。

「この不安を消さなきゃ」
「なんでこんなことを考えるんだ」

そして、不安と戦おうとしてしまいます。

しかしマインドフルネスでは、不安を無理に消そうとはしません。

ただ、こう気づきます。

「今、自分は不安を感じているな」

それを 事実として認識するだけです。

すると不思議なことに、その感情に飲み込まれる力が少し弱まることがあります。

このように、マインドフルネスは執着をゆるめ、心の柔軟性を取り戻す練習でもあるのです。


🧘‍♂️「今、ここ」を感じるエクササイズ(3-3-3法)

不安で頭がいっぱいになったり、過去や未来の心配事にとらわれてしまったときに、

意識を「今」に戻す簡単な方法があります。

【やり方】

① 視覚
周りを見回して、目に見えるものを3つ見つけます。
(例:時計、窓、自分の手)

② 聴覚
耳を澄ませて、聞こえてくる音を3つ探します。
(例:空調の音、車の音、衣擦れの音)

③ 身体感覚
体の感覚を3つ感じ取ります。
(例:足の裏が床についている感覚、服の肌触り、眼鏡の重さ)

ポイントは、見つけたものに対して「良い」「悪い」と評価しないことです。

「ただ時計があるな」
「ただ音が聞こえるな」

と、実況中継するように気づいていきます。

このシンプルな練習だけでも、暴走していた思考が 「今の現実」 に引き戻され少し落ち着きを取り戻せることがあります。

反芻思考(ぐるぐる思考)への対処

「あの時こうしていれば…」
「もし失敗したら…」

このように、過去や未来のことを何度も考え続けてしまう状態を心理学では 反芻思考(rumination) と呼びます。

この状態は、脳にとっては強い「執着状態」とも言えます。

無理に止めようとすると、かえって強くなることもあります。

そこで役立つのが「注意を逸らす」のではなく「注意を転換する」方法です。

例えば ネーミング・ウォーク という方法があります。

散歩をしながら、あるいは部屋の中で、目に入ったものの名前をリズムよく心の中で唱えます。

「信号、空、車、看板、犬…」

不安を消そうとするのではなく、目の前の現実にラベルを貼っていくことに意識を向けるのです。

そうすることで、思考のループから 一時的に距離を置くこと ができます。

🍵日常でできる実践法

こだわりや強迫的な行動を変えていくには、少しずつ習慣を重ねていくことが大切です。

呼吸でリズムを整える

緊張しているときは呼吸も浅くなります。

「4-7-8呼吸法」はリラックスを促す方法として知られています。

鼻から 4秒吸う
息を 7秒止める
口から 8秒かけて吐く

これを数回繰り返すことで、高ぶった神経を落ち着かせる助けになることがあります。

不安に向き合うときの「お守り」として

不安症の治療ではエクスポージャー療法(曝露療法) が用いられることがあります。

これは、不安を感じる状況を少しずつ体験していく方法ですが、一人で行うにはとても勇気が必要です。

マインドフルネスは、そのような場面で

「今の呼吸」
「今の体の感覚」

に意識を向けることで、不安の波に飲み込まれずに乗り越えるための“心のお守り”のような役割を果たしてくれることがあります。

🌿おわりに

「執着を手放す」というのは言葉で言うほど簡単なことではありません。

長年続いてきた思考の癖は、少しずつ、時間をかけて変わっていくものです。

もし今、「こうでなければならない」という思いに押しつぶされそうになっているなら、まずは

「ああ、今、自分は苦しんでいるんだな」

と、その気持ちに気づいてあげてください。

それだけでも、立派なマインドフルネスの第一歩です。

あなたの心が、少しでも柔らかく、自由になれる瞬間が増えていくことを願っています。


【ご案内と免責事項】

本記事は、マインドフルネスが不安や強迫的な思考の緩和に役立つ可能性を示唆する心理学的知見をもとに作成しています。すべての方に同じ効果があるわけではありません。

症状が強い場合や日常生活に支障が出ている場合には、ご自身だけで抱え込まず医療機関や専門家への相談をご検討ください。


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よくあるご質問(FAQ)❓

Q
不安で同じことを何度も考えてしまうのはなぜですか?
A

不安が強いと、人の脳は危険を回避しようとして問題を繰り返し考える傾向があります。これを心理学では「反芻思考」と呼びます。反芻思考は不安を解決しようとする自然な反応ですが、続くと心の疲労や不安の増幅につながることがあります。

Q
ぐるぐる思考を止める方法はありますか?
A

完全に止めようとすると逆に強くなることがあります。そのため、思考を抑え込むよりも「注意を別の対象に向ける」ことが有効です。マインドフルネスの実践や、周囲の景色や音に意識を向ける方法(3-3-3法など)が役立つ場合があります。

Q
マインドフルネスとは何ですか?
A

マインドフルネスとは「今この瞬間の体験に気づく心の姿勢」を指します。良い・悪いと判断せずに、自分の呼吸や身体感覚、思考や感情に気づくことで、感情に巻き込まれにくくなることが期待されています。

Q
マインドフルネスは不安症や強迫症にも役立ちますか?
A

マインドフルネスは、不安や反芻思考を和らげる補助的な心理アプローチとして研究されています。ただし症状が強い場合は、認知行動療法などの専門的な心理支援や医療機関の受診と併用することが望ましい場合があります。

「身体に残るトラウマ反応についてはこちら」

管理者

阿賀嶺 壮志(あかみね たけし)
1983年、沖縄生まれ
一般社団法人プラスワンライフ代表理事:公認心理師

精神科クリニックや学校現場で、15年にわたり心理支援・カウンセリングに携わってきた信頼と実績のあるカウンセラー。
幼少期の病弱さと孤独な経験から「ありのままの自分を受け止めてくれる存在」の大切さを深く実感し心理の道を志す原点となる。
教員時代の挫折や、言葉を超えた児童との心のつながりを通して、トラウマ支援への使命感を強めていった。

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