第六夜『何もかも憂鬱な夜に』

著:中村文則       ㈱集英社  2012年発行

こんな日あるよねーと思いながら手に取った一冊。暗い話かと思いきやほんわか明るくなったりハラハラしたり。

「現在というのはどんな過去にも勝る。そのアメーバとお前を繋ぐ無数の生き物の連続は、その何億年という途方もない奇跡の連続は、いいか?すべて今のお前のためだけにあった、と考えていい」

著書より引用

力強くて説得力のある言葉だなぁ!

生まれてきて良かったのか、何の意味があるのか等、自分の存在意義が見えなくなったり小さくなったりしたときに言って欲しいと思う。

それで何か変わるというより、自分は居てもいいのかなとわずかな希望が生まれるような気がする。

このセリフは孤児院の施設長が主人公にかける言葉なんだけれど、言葉って強いなぁと思う。

西洋医学の祖ヒポクラテスは、医師には三つの武器があると言っている。「第一に言葉、第二に薬草(薬)、第三にメスである」

一番目に言葉を持ってきていることは、それだけの意味があるということだろうな。薬や手術に勝るものが言葉ということなのか。

「自分の好みや狭い了見で作品を簡単に判断するな」とあの人は僕によく言った。「自分の判断で物語をくくるのではなく、自分の了見を物語を使って広げる努力をした方がいい。そうでないと、お前の枠が広がらない」 「自分以外の人間が考えたことを味わって、自分でも考えろ」

著書より引用
金魚は何を考えてる?

学校の教科書に載っていたピカソを見て、なんだこれと思った。こんな絵にすごい価値があるなんて信じられなかった。数秒とたたずにページを飛ばしてみた記憶がある。

なぜその絵がすごいのかを考えようとしなかった。自分の基準でしか考えてこなかった。

人の気持ちも同じように、なんでこの人はこんな風に言ったのか、こんな行動をとったのかを、よく分からないで片付けていたように思う。自分には分からない、理解できないと。

でもそれだと成長はないだろうなぁと思う。安全ではあるけれど、成長はなくて、成長がないから結果的に安全ではなくてむしろ危険な状態で。

世界は変化しているから、変化に強くなれたらいいと思う。

「お前は何もわからん。ベートーヴェンもバッハも知らない。シェークスピアを読んだこともなければカフカや安部公房の天才も知らない。」「お前はまだ何も知らない。この世界に、どれだけ素晴らしいものがあるのかを。俺が言うものは全部見ろ」

著書より引用

人が死ぬ前に後悔することの中には「もっと冒険しておけば良かった」というものがある。

気分が落ち込んだ時はなるべく一流のものに触れたいと思う。エネルギーもあるし、それが完成するまでの途方もない年月や思いが、自分の存在をちっぽけにして、そのちっぽけさが心地好い。

世界遺産の首里城は焼けてしまった。こんなことだったらもっと見たかったと思っている人は多いだろう。死ぬ前と同じように悔いるのだろうか。

世界は変化しているし、自分の周りも自分自身も同じということはない。

それなら毎日を注意深く見つめる。それが死ぬ前の後悔を和らげてくれると思う。

食べて見たかったものを食べるのまた必要。

やりたいことはやる!と決める。

なりたい自分になる!と決める。

管理者

阿賀嶺壮志(アカミネタケシ)1983年沖縄生まれ。
一般社団法人プラスワンライフ代表理事・公認心理師。精神科クリニックと学校現場において10年以上にわたる心理支援・カウンセリング経験を重ねてきた信頼のカウンセラー。幼少期の病弱で孤独な体験から「ありのままの自分を受け止めてくれる存在」の大切さを深く実感し、心理の道を歩む原点に。教員時代の挫折と児童との思いがけないつながりも、トラウマ支援への志へとつながっています。
2019年に「トラウマ治療専門カウンセリングルーム」を開設。統合的な心理療法と自然療法を組み合わせ、「元以上の状態へ」導く支援を理念としています。2021年には絵本『さばくと少年』を出版し、沖縄県内すべての小学校に配布されるなど、教育への貢献も続けています

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