うつになりにくい人は「何もしない時間」を自分に許せる人

「少し手が空くと不安になる」
「休もうとしても、なぜか罪悪感が出てくる」

こうした感覚に心当たりがある方は少なくありません。

私は沖縄で、トラウマを専門にカウンセリングを行っています。臨床の現場では「休みたいのに休めない」「なんだか罪悪感が出てくる」という悩みは、とてもよく聞かれます。そして多くの場合、その背景には“性格の問題”では説明できない心理的な仕組みがあります。


人は「不安定な環境」を経験すると、“備える”ことを学ぶ

過去に不安定さや緊張の多い環境を経験すると、脳は無意識のうちに「備えることで安全を確保する」という学習をします。

  • 先回りして考える
  • 失敗を避けるために準備を重ねる
  • 誰かの期待に応え続ける
  • 何かしていないと不安になる

こうした反応は、これまでを生き抜く上で役立ってきた“適応”だったのかもしれません。だからこそ、いざ休もうとすると、脳が「危険かもしれない」と警報を鳴らしてしまうのです。


休めない人に多い3つの背景

臨床の現場では、休めない方に共通しやすい背景として、次のような傾向が見られます。

① 完璧主義(中途半端=危険)

「ちゃんとできないなら意味がない」
「失敗するくらいなら、もっと頑張る」
完璧主義は努力家の証でもありますが、心の余白が削られやすくなります。

② 過剰な責任感(自分が背負わないと崩れる)

「私がやらなきゃ回らない」
「迷惑をかけたくない」
責任感の強さは信頼につながる一方で、休息を“許されないもの”にしてしまうことがあります。

③ 評価への敏感さ(認められないと存在が揺らぐ)

「認められないと不安」
「嫌われるのが怖い」
評価への敏感さが強いと、安心の基準が“外側”に置かれやすくなり、休むほど自己否定が出やすくなります。

これらは生まれつきの性格というより、これまでの経験の中で形成されやすい“心の枠組み”です。つまり、休めない自分を責めるより、「そうならざるを得なかった背景がある」と理解することが、回復の入口になります。


トラウマがあると「休むほど怖い」ことが起きる

トラウマ経験がある場合、休息がかえって怖くなることがあります。

  • 休むと感情が押し寄せる
  • 静かになると過去が浮かぶ
  • 身体が緊張して、リラックスできない
  • 何もしないと“空白”が不安になる

これは「心が弱い」からではありません。心理学・神経生理学の視点では、神経系が警戒状態(過覚醒)から切り替わりにくい状態として理解できます。

動いている間は保てていたバランスが、止まった瞬間に崩れそうに感じる。だからこそ、休もうとすると罪悪感や焦りが強くなるのです。


うつになりにくい人は、“強い人”ではない

うつになりにくい人は、特別に強い人というよりも、
「休むことを自分に許可できる人」です。

休む=価値が下がる、ではなく
休む=回復して戻れる、という感覚を持てる人。

ここがとても大切です。休息はサボりではなく、心と脳の回復に必要なプロセスです。回復が進むほど、「止まっても大丈夫」という感覚が、少しずつ育っていきます。


まずは「守ってきた自分」に気づくことから

もし今あなたが休めないなら、責めるのではなく
「守ってきた自分に気づく」ことから回復は始まります。

休めないのは、これまでのあなたが頑張ってきた証拠でもあります。
あなたのペースで大丈夫です。🌿

管理者

阿賀嶺 壮志(あかみね たけし)
1983年、沖縄生まれ
一般社団法人プラスワンライフ代表理事:公認心理師

精神科クリニックや学校現場で、15年にわたり心理支援・カウンセリングに携わってきた信頼と実績のあるカウンセラー。
幼少期の病弱さと孤独な経験から「ありのままの自分を受け止めてくれる存在」の大切さを深く実感し心理の道を志す原点となる。
教員時代の挫折や、言葉を超えた児童との心のつながりを通して、トラウマ支援への使命感を強めていった。

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