努力しても安心できない人へ

― 「安心感」はどのように育つのでしょうか

🥀 安心感は、「何かを達成した先」にあるものではありません

私たちは、「これができれば安心できる」と考えやすいものです。

仕事で成果を出せば、自信が持てる。

収入が増えれば、不安はなくなる。

周囲から認められたら居場所が持てる。

そう思って努力を重ねることは、ごく自然なことです。

実際に、努力が人生を豊かにしてくれる場面も数多くあります。

しかし、カウンセリングの中で多くの方とお会いしていると、一つ感じることがあります。

それは、「安心」は成果の大きさとは必ずしも比例しないということです。

周囲から評価され、責任ある仕事を任されている方でも、「まだ足りない」と苦しんでいることがあります。

反対に、決して順風満帆ではなくても、自分らしく穏やかに過ごしている方もいます。

その違いを生み出しているのは、能力ではありません。

「安心していても大丈夫」という感覚を、心が持てているかどうかなのです。

🤲 私たちは「安心の感じ方」を学びながら育っていきます

幼い子どもは、自分一人では安心をつくることができません。

お腹が空いたときに食事を用意してもらう。

泣いたときに抱きしめてもらう。

怖かったときに、「大丈夫だよ」と声をかけてもらう。

こうした経験を繰り返しながら、「困ったときには助けてもらえる」「自分は大切にされる存在」という感覚を少しずつ身につけていきます。

もちろん、現実にはすべてが理想的な環境とは限りません。

親も一人の人間です。

忙しい日もあれば、余裕のない日もあります。

だからこそ、大切なのは「完璧な親」ではなく、「安心できる経験が積み重なっていくこと」です。

安心感とは、一度の出来事で決まるものではなく、小さな体験の積み重ねによって育っていきます。

頑張ることで安心を得ようとしていたのかもしれません

一方で、子どもの頃から、

「もっと頑張りなさい。」

「失敗してはいけない。」

「迷惑をかけないように。」

そんな言葉を繰り返し受け取ってきた人もいます。

その環境の中では、努力することは必要な適応だったのでしょう。

頑張ることで認められ、期待に応えることで安心を得てきたのかもしれません。

それ自体は、生きていくための大切な力です。

だから、努力できる自分を否定する必要はありません。

ただ、大人になっても同じ方法だけで安心を得ようとすると、心は少しずつ疲れてしまいます。

仕事が終わっても、「もっとできたのではないか」と考えてしまう。

休日でも、何かをしていないと落ち着かない。

誰かに褒められても、「まだ十分ではない」と感じてしまう。

そんな状態が続くと、努力は自分を支えるものではなく、自分を追い立てるものへと変わってしまいます。

🌧️「安心できなかった体験」が積み重なること

トラウマという言葉を聞くと、大きな事故や災害を思い浮かべる方が多いかもしれません。

もちろん、それもトラウマの一つです。

しかし、心理臨床では、それだけではありません。

例えば、

気持ちを受け止めてもらえなかった経験。

失敗するたびに強く否定された経験。

親の顔色を見ながら過ごしていた日々。

安心したくても安心できなかった時間。

こうした体験が積み重なることで、「安心すること」そのものが難しくなることがあります。

だからこそ、大人になってからも、「もっと頑張れば安心できる」と無意識に考えてしまうことがあるのです。

これは弱さではありません。

その時々の環境の中で、自分を守るために身につけた方法だったのだと思います。それは一種の適応です。

もうその適応を手放しても良い時期に来ているのかもしれません。なにかしていなくても安心できる、周囲からの評価に振り回されない、そんな自分軸を育てていくことを始めてみませんか。

🌱 安心感は、大人になってからでも育てていくことができます

ここまで読むと、

「もう子どもの頃のことだから変えられない。」

そう感じる方もいるかもしれません。

でも、私はそうは思いません。

安心感は、人との関わりの中で育つものだからこそ、大人になってからも育て直すことができます。

もちろん、一日で変わるものではありません。

けれど、自分に向ける言葉が少し変わること。

安心できる人との時間が増えること。

失敗しても、「それでも大丈夫」と思える経験を積み重ねること。

そうした一つひとつが、新しい安心感を育てていきます。

カウンセリングも、そのような体験を積み重ねていく場の一つです。

問題を解決するだけではなく、「安心して自分を話せる」「評価されずに受け止めてもらえる」という経験そのものが、心の土台を少しずつ変えていきます。

次回は、「安心感」を土台にした生き方について

「もっと頑張らなければ。」

その気持ちを無理に消そうとする必要はありません。

ただ、その努力が不安から始まっているのか、それとも自分らしく生きるためのものなのかに気づけるようになると、努力の意味は少しずつ変わっていきます。

次回は、「安心感は大人になってからでも育てることができる」という視点から、安心を土台にした生き方についてお話しします。


(第3回へ続く)

管理者

阿賀嶺 壮志(あかみね たけし)
1983年、沖縄生まれ
一般社団法人プラスワンライフ代表理事:公認心理師

精神科クリニックや学校現場で、15年にわたり心理支援・カウンセリングに携わってきた信頼と実績のあるカウンセラー。
幼少期の病弱さと孤独な経験から「ありのままの自分を受け止めてくれる存在」の大切さを深く実感し心理の道を志す原点となる。
教員時代の挫折や、言葉を超えた児童との心のつながりを通して、トラウマ支援への使命感を強めていった。

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