
「過去のことなのに、身体が反応する」「思い出したくないのに浮かぶ」——
それは意志の弱さではなく、神経系が“危険”を学習した結果かもしれません。
トラウマ(心的外傷)は、交通事故、災害、虐待、暴力、突然の喪失体験など、強い恐怖や無力感を伴う出来事によって心身に残る反応のことです。
単なる「つらい記憶」ではなく、睡眠・自律神経・対人関係・自己感など幅広い領域に影響する場合があります。
この記事では、トラウマの定義、症状、PTSDとの違い、回復の道筋を専門的にわかりやすくまとめます。
トラウマの定義🧠
トラウマ(trauma)とは、
- 命の危険を感じた
- 圧倒的な恐怖や無力感を経験した
- 自分の力ではどうにもできない出来事に直面した
といった体験によって生じる心的外傷です。
人には本来「出来事を処理して落ち着きを取り戻す力」があります。
しかし、対処能力を超える出来事に遭遇すると、脳や神経系が非常事態モードになり、体験が十分に処理されないまま残ることがあります。
トラウマとPTSDの違い📌
混同されやすいですが、次のように整理できます。
- トラウマ:体験後に起こる心身の反応全般(多くの人に起こり得る/時間とともに軽くなることも)
- PTSD:トラウマをきっかけに症状が長期化し、生活に支障が出る状態(診断名)
トラウマ体験をしたすべての人がPTSDになるわけではありません。
ただし、支援が得られにくい、体験が重なる、安心できる環境がないなどの場合、症状が慢性化することがあります。
トラウマの種類🚨
単回性トラウマ
一度の衝撃的な出来事によって生じるトラウマ。
例:交通事故/自然災害/暴行被害/突然の事故や怪我 など
複雑性トラウマ(複雑性PTSD)
長期間・反復的で、逃れにくい状況下での体験が土台になるトラウマ。
例:児童期虐待/DV/ネグレクト/支配的関係/監禁/戦争体験 など
複雑性トラウマでは、恐怖記憶だけでなく、自己評価・感情調整・対人関係に影響が広がりやすいのが特徴です。
主な症状
1)再体験(侵入症状)🔁
- フラッシュバック(今起きているように感じる)
- 悪夢
- 意図しない想起(勝手に浮かぶ)
- 動悸・発汗・息苦しさなどの身体反応
2)回避🚪
- 場所・人・話題を避ける
- 感情がわきにくい(麻痺した感じ)
- 記憶の一部が抜け落ちる(解離性健忘)
3)過覚醒⚡
- 不眠(寝つけない/浅い)
- 些細な刺激に驚く
- 過度な警戒、イライラ、集中力低下
4)身体症状🫀
- 自律神経:動悸、発汗、震え、呼吸のしづらさ
- 消化器:腹痛、吐き気、下痢、便秘
- その他:頭痛、めまい、慢性的な痛み、筋緊張
5)複雑性トラウマに特徴的な症状🧩
- 感情調整が難しい
- 強い自己否定、恥、罪悪感
- 対人関係が安定しない(近づくのが怖い/依存しやすい等)
なぜ「心」だけでなく「身体」に出るのか
トラウマは神経系に影響します。
ポリヴェーガル理論の観点では、トラウマ後に神経系が安全を検出しにくくなり、
- 戦う/逃げる(過覚醒)
- 凍りつく(フリーズ)
が固定化することがあります。
その結果、安全な場面でも身体が危険モードのままになり、緊張が抜けにくくなることがあります。
また、つらさから身を守るために感情や身体感覚を切り離す「解離」が起こることもあります。これは弱さではなく、当時を生き抜くための防衛反応です。
回復は可能です:支援と治療の選択肢🧭
トラウマ回復は一直線ではありませんが、適切な支援で改善が期待できます。
代表的な選択肢には次があります(状態により選択は変わります)。
- EMDR:両側性刺激を用いて記憶の再処理を促す
- 認知行動療法(CBT):考え方・行動パターンを整理し生活を取り戻す
- STAIR Narrative Therapy:感情調整→体験統合を段階的に進める(複雑性PTSDに用いられることがある)
- Brainspotting(BSP):身体感覚と視点を活用し処理を促す
- フラッシュ・テクニック:苦痛を最小限にしながら進めることを目指す方法
- 薬物療法(医療):不眠・不安・抑うつなどの症状緩和を補助(医師の判断が必要)
- 統合的アプローチ:呼吸法、マインドフルネス、運動、生活リズム調整などで神経系の回復を支える
回復のステップ(目安)🌱
- 安全の確保(生活・人間関係・環境)
- 症状の理解と対処(落ち着かせるスキルを習得)
- トラウマの処理(専門家と段階的に統合)
- 人生の再構築(人間関係・目標・生き方を組み立て直す)
焦らず「今の自分に合うペース」が大切です。
一般社団法人プラスワンライフのサポート🛋️
一般社団法人プラスワンライフでは、トラウマケアを含むカウンセリングを提供しています。沖縄を拠点に全国対応で、対面・オンラインなど柔軟にサポートしています。
「いま困っている症状の整理」からでも大丈夫です。
一人で抱え込まず、ご相談ください。
※本記事は情報提供を目的としています。強い症状や安全面の不安がある場合は医療機関・専門機関へご相談ください。⚠️
FAQ❓(よくある質問)
Q1. トラウマは「忘れられない出来事」のことですか?
A. トラウマは忘れられない出来事そのものというより、その出来事のあとに心と身体に残る反応(傷つき)のことを指します。あなたの心と身体が、当時の危険から守ろうとしてきた“自然な働き”なんです。
Q2. トラウマとPTSDは同じですか?
A. 混ざって語られることが多いので、混乱しますが…
- トラウマ:つらい体験のあとに起こる、心と身体の反応全体(怖さ・緊張・回避・眠れない等)
- PTSD:トラウマ体験がきっかけで、症状が長く続き、日常生活に支障が出ている状態(診断名)
つまり、トラウマ体験をしても、必ずPTSDになるわけではありません。
Q3. フラッシュバックが起きるのは弱いからですか?
A. 似た音・匂い・場所・言葉などの刺激に触れた瞬間に、体が勝手に反応してしまうことがあります。それは意思や根性で止めるものではなく、生き延びるために備わった仕組みです。頻度が多い/生活に支障がある/一人で抱えるのがつらいときは、無理せず相談してください。
Q4. 複雑性トラウマ(複雑性PTSD)とは何ですか?
A. 複雑性トラウマ(複雑性PTSD)とは、一回の出来事というより、長期間・繰り返しのつらい体験(逃げにくい環境や関係の中での体験)が積み重なって、心と身体に影響が残っている状態を指します。
Q5. トラウマは治りますか?回復できますか?
A. はい、回復できます。トラウマは「一生このまま」というものではなく、適切なサポートとケアによって、症状が和らぎ、日常を取り戻していく方はたくさんいます。安全の確保→症状対処→体験の統合→再構築という段階的支援が役立ちます。揺れがあっても「後退」ではありません。
Q6. 詳しく話せないのですが相談できますか?
A. はい、詳しく話せなくても相談できます。無理に細部を語ろうとすると、心や身体が一気に緊張してつらくなることがあります。だから最初は、次のような“話せる範囲”からで大丈夫です。
Q7. 身体症状(腹痛・動悸など)もトラウマと関係しますか?
A. はい、関係することがあります。トラウマは「心の問題」だけでなく自律神経(体の緊張や内臓の働き)にも影響しやすいです。「体に出るなんて自分が弱いのかな」と責めなくて大丈夫です。体が頑張って守ってきたサインかもしれません。話せる範囲から一緒に整理していきましょう。
Q8. どこに相談すればいいですか?
A. つらいとき「どこに相談すればいいのか分からない」のは自然なことです。
目安としては、いま一番困っていることで選ぶと安心です。心身の状態により、医療機関(精神科・心療内科)と心理支援(公認心理師等)の併用が有効なことがあります。

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