👁EMDRとは何か？
つらい記憶や出来事が、現在の生活に影響を及ぼしていませんか？
何年経ってもフラッシュバックが起きたり、不安や怒り、自己否定の感情が突然こみあげたり…
それは「過去の記憶」が、脳内で適切に処理されないまま「今ここ」に影響を及ぼしている状態かもしれません。
トラウマ治療のひとつとしてEMDR（Eye Movement Desensitization and Reprocessing：眼球運動による脱感作と再処理法）という心理療法があります。
EMDRは、そうした心の奥に残るトラウマ（心理的外傷）をほぐし、再処理することを目的とした心理療法です。現在ではPTSD（心的外傷後ストレス障害）をはじめ、不安障害やうつ病など幅広い症状に対して世界的に用いられています。
💭「過去のつらい記憶」に悩まされていませんか？
- ふとした時に、昔のことが頭をよぎって胸が苦しくなる
- 特定の人や場面に強い不安や恐怖を感じる
- 昔のことなのに、まるで今起こっているかのようにリアルに思い出される
…もしこんな体験がある方がいたら、それは「トラウマ」が関係しているかもしれません。
トラウマというと「大きな事故」や「戦争のような経験」を思い浮かべる方も多いですが、
実は、日常の中で積み重なった小さな傷（小さなトラウマ）も、私たちの心に大きな影響を与えることがあります。
たとえば…
- 幼い頃の心ない言葉
- 無視された経験
- 理解されなかったつらさ
- 失敗体験や、突然の別れ
そうした「未処理の記憶」が、無意識の中で今の生活や人間関係に影響を及ぼしていることも少なくありません。EMDRは、それらの記憶をゆっくり、安全に、心が納得する形で処理していくサポートをしてくれます。
💡EMDRの特徴と治療の仕組み
EMDRは1989年にアメリカの心理学者フランシーン・シャピロ博士によって開発されました。
その最大の特徴は、「眼球運動などの両側性刺激を用いながら、トラウマ記憶を処理していく」という点です。手のひらを左右交互にタッピングしたり、左右の耳に音を聞かせる方法もあります。
🧠 治療のメカニズム（わかりやすく）
- トラウマ記憶は、脳の「扁桃体」などが強く反応し、理性的な脳である「前頭前野」で処理されずに凍りついたまま保存されていることがあります。脳の情報処理がうまくいかず“未消化”のまま残ってしまうのです。
- EMDRでは、セラピストが手を左右に動かし、それを目で追うなどの両側刺激（Bilateral Stimulation）を加えながら、トラウマ記憶に安全にアクセスしていきます。未消化の記憶に両側性刺激を加えることで、脳が本来持つ「情報処理の力」を活性化していきます。
- この刺激が脳の情報処理ネットワークを活性化し、記憶の「再処理（Reprocessing）」が促されることで、感情的な苦痛が和らぎます。さらに今現在の安心安全を補償していくことで、記憶を“対処可能なもの”として再処理できるようサポートします。
🔄 たとえるなら…
「ずっと棚の奥でホコリをかぶっていた重たい荷物（記憶）を、やさしく取り出して整理整頓するような作業」です。
🧩治療の流れ
EMDRはPTSD治療において、WHO（世界保健機関）やアメリカ心理学会（APA）などからも、PTSDやトラウマ治療に効果的であると公式に推奨されている治療法でも推奨されている有効性の高い心理療法です。
- カウンセリング・評価
↳まずは安心できる環境で、今抱えているお悩みやトラウマ体験についてお聞きします。治療したい記憶や感情を一緒に見つけていきます。 - 準備とセルフケア
↳まずは安心して取り組める状態をつくります。EMDRを安全に進めるため、リラクゼーションや感情調整の方法を一緒に練習します。 - 両側性刺激を使った再処理
↳つらい記憶を思い出しながら、左右交互の刺激を受けます。詳細を言葉にしなくても大丈夫です。左右に眼球を動かしたり、タッピング（手に触れる刺激）などを行います。 - 肯定的な認知の定着
↳新しい捉え方や安心感を育てていきます。脳が情報を再処理し、つらい記憶が「過去のもの」として整理されていきます。 - ボディスキャン・アフターケア
↳身体の反応を確認し、必要に応じて安定化のスキルを使います。
このプロセス、レム睡眠（夢を見る睡眠）の脳活動と似ているとされており、脳が自然な回復力を発揮しやすくなると考えられています。
🌈EMDRで期待できる効果
- フラッシュバック、悪夢、過覚醒の軽減
- 強い不安、怒り、悲しみなどの感情反応の緩和
- 自己否定や無価値感の改善
- トラウマ記憶への過敏な反応の減少
- 前向きな思考、落ち着いた気持ちの回復
患者さまの多くが「重たい記憶に対する感じ方が変わった」「思い出しても以前ほどつらくない」と話されています。日本でも多くの公認心理師や医療機関が採用しており、PTSDだけでなく不安障害、パニック障害、愛着障害、うつなどにも応用されています。
科学的なエビデンスも豊富です
✅トラウマ体験に関連する不快な感情や思考が軽減し、自己イメージや身体的な苦痛も改善することが報告されています。
✅他の心理療法と比べて、つらい体験を詳細に話さなくてもよいので、負担が少なく続けやすいのも特徴です。
✅ PTSD患者の約80%が症状の大幅な改善や、脳の働きをポジティブに変化させる神経生理学的変化が報告されています（Shapiro, 2014）
重度の解離症状や安定していない精神状態の方は、事前に十分な準備や他の治療が必要な場合があります
🍀安心して治療に取り組んでいただくために
EMDRは、段階的に、安全に、そして丁寧に進めていく心理療法です。
記憶に向き合うことへの不安や怖さがある方もご安心ください。
カウンセリングの初期段階では、十分な準備とリソース構築を行います。
EMDRを受ける際は、経験豊富なEMDRセラピストとの相談や支援を受けることが重要です。
トラウマやつらい体験でお悩みの方へ――
「もう変われない」と感じているかもしれませんが、こころの整理は、少しずつでも、必ず前に進んでいきます。一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
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